新型コロナのワクチン接種 副反応は? 予防への期待は? 米国在住の感染症専門医に聞いた

患者の数が増えると医療の負担は重くなり、死亡率も上がる

ーー様々な感染症を診てきたと思いますが、新型コロナウイルスはどういう特徴があると思いますか?

死亡率や重症化の率はインフルエンザより少し多いぐらいです。しかし、これまで経験したことのない感染症の患者が同時に大勢受診するという意味で、病院の負担はすごく大きいです。

患者の数が増えると、診療に余裕がなくなり、それによって死亡率も上がるというデータが出つつあります。それがこの感染症の最も厄介な特徴です。

ヒューストンの患者で多いのは、若い人が感染して、家の中で隔離できず、重症化リスクの高い両親や祖父母にうつしてしまう。その人たちが重症化して入院するパターンです。若い人でも重度の肥満がある人は重症化して入院してきます。

ーー日本と同じですね。健康格差もありそうですか?

ありそうです。感染者は社会的弱者にも多く見られます。一人感染すると隔離できないほど狭い家に住んでいるので、家族全体に広がってしまいます。

一時ロックダウンをした時も、経済格差が大きいアメリカで、感染によって職を失った患者さんもいます。日々、医療費を払うのに困っている患者さんもたくさんいます。

ロックダウンをすれば感染者が減ることは明白なのですが、食べていけなくなってしまえば元も子もありません。経済的に破綻してしまう人が多いので、再びロックダウンを簡単には打ち出せない状況にあると思います。

ーー記憶に残る患者はいますか?

重症者を多く診ているので、亡くなる方も多いです。28歳の若い医師が入院してきたのですが、ECMO(体外式膜型人工肺)をつけるほど重症化し、最終的に亡くなりました。自分より若く、持病もなく、太ってもいない医師が感染して死亡する。身近でもこんなことがあるのだと思うと、かなりショックなことでした。

痛みと倦怠感があるも、すぐに回復

ーーご自身の感染のリスクも感じながら診療を続けていらっしゃるわけですが、ワクチンを接種したのはいつ頃ですか? 副反応はありましたか?

12月中旬と1月の上旬、ファイザーのワクチンを受けました。接種自体は全然痛くありませんでしたが、その6時間後ぐらいに接種したところがだんだん痛み出して、翌日の痛みはかなり激しかったです。色々なワクチンを受けてきましたが、他のワクチンと比べても痛みは強かったです。

腫れもしました。腕を上げるのも痛く、接種した部分の熱っぽさもありました。しかし48時間すると全て症状はなくなりました。

2回目の接種の時はあまり痛みはなかったのですが、翌日の倦怠感がとてもつらかったです。金曜日に受けて翌日は休みだったので、1日家で寝ていました。それも24時間ぐらいで良くなり、月曜日から普通に仕事をしました。

ーー周りの医療従事者はどうですか?

人によって副反応もまちまちです。若い人の方が少し副反応が大きいと言われていますが、若くても全然症状が出ない人もいますし、僕より上の年齢でも同じように重たい反応が出る人もいました。

看護師で発熱して勤務を1日、2日休まなければならなかった人もいました。

ーー病院でまとめて受けるのですね。

テキサス州でのワクチンの分配は病院ごとで、いつ受けるかを医療従事者ごとに決めていきます。このワクチンの効果と安全性を検証した治験の論文で、こうした副反応がある程度起きることはわかっていたので、院内の会議で同じ部署の人たちはなるべく同時に受けないようにすることになっていました。

こうした副反応が起こり得ることは、事前に病院のスタッフには知らせていました。

一部ワクチンに不安がある人も 病院トップが繰り返し説明の機会

ーー周囲の医療者でワクチンに不安のある人はいますか?

やはりアメリカでもワクチンに対する拒否感がある人はいます。人種間でも違いがあり、社会問題となっています。

ワクチンに限りませんが、新型コロナ診療については、病院長が週2〜3回、全スタッフに向けてメールやオンライン会議で説明の機会を設けています。こうした情報提供は、昨年2月から継続的に定期的にやっています。

会議では病院内の専門家が呼ばれて、病院長が質問しそれに回答する形で正しい情報を浸透させています。

例えば最近、「マスクを二重につけた方がいいのか」という話題が出ましたが、これについても現場の医療従事者から質問が来ました。二重にすることがいいわけではなく、フィット感が増すことが目的であるとCDCによって示されているので、それを解説したりしています。

ーーワクチンに関してはどんな質問が出ていますか?

1つはやはり副反応についての質問です。また、妊婦さんはうつべきか、免疫不全の人はどうすべきかという質問が多いです。あとは各病院でどうやって2度のワクチンを接種するのかなど、組織としての手続きの問題です。

また、一般向けに外来でどのようにワクチン接種を始めるか、訪問看護の患者さんや退院していく患者さんにワクチンをどのように打つかなどの方針を提供しています。

それだけ情報提供しても、ワクチンに拒否感を持っている医療スタッフは3割程度いる印象を受けます。同僚同士でも受けていない人は言いづらい空気があります。

患者さんと話していても、ワクチンに対しては受け入れのいい人と悪い人に分かれています。

救えない命を診てきたからこそ ワクチンへの効果へ期待

ーー重症患者を日々診療されていて、予防接種への期待はなおさら大きいのではないでしょうか。

既に大きな医学誌で数万人規模で検証したデータが出ています。これほどきれいなグラフが見られるのかと驚くぐらい、高い効果が出ています。しかも、ファイザーとモデルナという2つの会社から同じような結果が出ています。

ここまで明らかな有効性を示したワクチンがあれば、いち早く患者さんに届けてあげたい。感染症専門の医師としてそんな強い思いがあります。

治療しても救えない患者さんはたくさんいます。

残念ながら今ある治療は全て特効薬ではありません。

抗ウイルス薬のレムデシビルもWHOでは効き目がないと言われています。ステロイド系抗炎症薬のデキサメタゾンも重症化した人に対する治療であって、使えば全員良くなるわけではありません。

特効薬がない状況下で、ワクチンにかける期待は治療に携わる医師の中でかなり大きいと思います。

ワクチンへの不安を煽る日本の報道、どう見る?

ーー日本では接種開始前からワクチンへの不安を煽る報道が週刊誌やワイドショーで散見され、問題となっています。アメリカの報道や公的機関は、逆に「ワクチンはうつべきだ」と積極的に推す発信が多いようですが、この日米の違いをどう見ていますか?

日米のワクチンに対する考えの差には色々な要因があると思います。

まず1970代にワクチンで副反応が出て、訴訟が起こされ、ワクチンに対する不信感が強まった歴史的背景があります。最近では、HPVワクチンでも副反応騒ぎで接種が実質的に止まってしまった問題がありました。

ワクチンと因果関係がある「副反応」かどうかもわからない接種後の問題に対して、日本では非常に大きくクローズアップされてしまいます。

そのような問題が起こってしまった患者さんは気の毒でしたが、ワクチンの副反応とは限りませんし、それを理由にワクチンへの不安感を煽るのは非常に残念です。しっかりとした科学的な検証と情報の透明性が必要です。

そして、メディアはワクチンをうたないことによる被害やリスクについて、全く論じません。これは本当に問題が大きいと思います。

例えば、日本が12月に2回目の緊急事態宣言を出した時、予防策の一つとしてワクチンの可能性をほとんど論じませんでした。ワクチン接種の担当大臣が決まったのも1月中旬に入ってからでした。

アメリカ・ヨーロッパでは承認後すぐに接種をスタートし、予防に対する効果が高いというデータも出てきているにもかかわらず、当時ワクチンの話が日本のメディアでほとんど出てこなかったことにショックを受けました。

ーーアメリカのメディアは接種後の死亡(接種後に死亡しても、ワクチンが原因とは限らない)についても冷静な報道をしていますか?

冷静かどうかはともかく、アナフィラキシー(アレルギー反応)の報道も一定割合で起きたとしても回復することを伝えていましたし、ノルウェーで接種後の死亡者の数字が出た時も、ワクチンが原因とは言えないと伝えていました。

不安を煽るのではなく、専門家による科学的な評価もきちんと伝えていました。

毎朝、こちらのテレビニュースを見ていますが、毎日朝7時に「今日はどこのワクチンの会場に空きがあります、予約なしでの接種も受け付けます」というアナウンスをしています。

ーーメディアもワクチン接種に積極的な報道をしているのですね。

そう感じます。

予防接種の勧め方にも感じる日米の医療の違い

医療の仕組みが日米で違うのも影響していると思います。僕は日本で研修し、日本で少し医師として働いてからアメリカにきています。日米の医療を比較すると、予防接種や予防医学は日本の一般診療には組み込まれていないと感じます。

アメリカでは内科で診察を行う時に、「あなたの年齢ならこのがん検診を受けないとおかしいです」とか、「こういうワクチンを受けていないといけません」と診療の中で常に患者さんと一緒に確認します。

コロナウイルスに限らず、帯状疱疹ワクチン、HPVワクチン、肺炎球菌ワクチンも、医師は積極的に日常診療の中で患者さんに「これを受けてください」と何度も勧めます。

自分たちがワクチンをうたず、早く予防行動をしないことによって数多くの人が亡くなったり、失業したりする。全体として大きなリスクと利益を見た時に、国としてどう動くか。その考え方の違いだと僕は思います。

自分たちがワクチンをうたず、早く予防行動をしないことによって数多くの人が亡くなったり、失業したりする。全体として大きなリスクと利益を見た時に、国としてどう動くか。その考え方の違いだと僕は思います。

できれば日本でもそういう考え方がもう少し広まればと思います。

ーーワクチン接種が日本でも始まりますが、一般の人に対するメッセージはありますか?

新型コロナウイルスのデータは日々更新されていますが、ワクチンは非常に高い効果があるというデータが示されています。もちろん他のワクチンや治療に比べたら観察している期間は少ないという限界がありますが、それを踏まえても素晴らしいデータです。

1日でも早く皆さんの元にワクチンが届くことを僕は心から願っています。

ーー接種して、ウイルスから守られている感覚はありますか?

接種が終わった後、気持ちは落ち着きますね。2月から毎日、新型コロナの患者さんを診ていても感染していないという事実はありますが、いつどのタイミングで感染するかはわかりません。

目の前にいるのが新型コロナの感染者だとわかっていたら防御するのは、そんなに難しいことではありません。

しかし、それがわからない人を日々外来で診たり街中で接触したりするわけです。交通事故や脳梗塞で入院した人も感染者の可能性があります。

ワクチンを受けて副反応は出ましたが、病院の中でこれだけ重症化している人を診ていますので、ワクチンは十分受けるに値するものだと思います。

もちろん感染予防のガードはまだ下げませんが、安心感は増えました。また、ワクチンの効果で患者さんが減り、少しでも早く通常の経済活動に近い世の中に戻ってくれることを切に願っています。

※兒子さんは医師らが新型コロナウイルスや新型コロナワクチンに関する正確な情報を届けるプロジェクト「こびナビ」のサイトでも体験談を紹介している。

【兒子真之(にご・まさゆき)】テキサス州立大学ヒューストン校感染症科助教授

2005年、福井大学医学部卒業。日本での研修医などを修了した後、2010年にベスイスラエル・メディカルセンター(現 マウントサイナイ・ベスイスラエル)にて内科研修をスタート。2013年よりテキサス州立大学ヒューストン校・MD Andersonの合同プログラムにて感染症科専門医研修開始、2016年より現職。

大学関連病院であるMemorial Hermann HospitalとLyndon B. Johnson Hospitalにて、臓器移植後感染症・一般感染症などを主に診療する傍ら、昨年よりCOVID-19患者の診療やワクチン推進などにも、専門医として深く関わっている。

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